今日は「松風考」の話です。
浅草の有名居酒屋「松風」さんが2009年3月に70年の歴史を閉じました。
このお店に私は何歳の頃から行っているのでしょうか、もしかしたら生まれる前(母親の胎内)から行っていたのかもしれません。というのは私の父がこのお店が大好きだったからです。当時は夫婦でいっていたのだと思いますが、母親はあまりお酒が好きではなかったのでそれはないかもしれませんね…
いずれにしても物心ついた頃から父親についていき、脇でじっとジュースを飲んでいた記憶があります。
幼少の頃の私はこのお店が好きでした。というのも私の父は意地汚いお酒飲みだったのですが、このお店ではお酒が三本しか飲めなくいつも早く切り上げたからです。
しかしそんな父の酔態を見ながら成長したので、大人になったら絶対にお酒は飲むまいと決めていたのですが、既に中学二年生から飲み始めていたのは恥ずかしい限りです。

このお店Local rule(特殊約束)が多いのです、確か「酔客禁止」、「知らない人への献杯の禁止」「お酒は一人三本まで」がありました。記憶を遡れば、お酒は3本、ビールは3本だったはずです。もともと吉原(遊郭)にいく客が景気づけに立ち寄ったので、酒は売るが、量は売らないということですが、これはコジツケですね。上述の飲兵衛の父が、昔はタンと飲めたのにな、とよく言っていましたので、客の回転率をあげる為でしょう。

長じて大学生の頃から、松風へ再訪し始めました。
このお店は燗がつくたびにお燗番さんの「ます〜み(日本酒「真澄」のこと)〜、三番さ〜ん」「あ〜い〜」の甲高い抑揚のある呼び声がこだまします。私はこの節回しが三代目「三遊亭金馬」の落語「居酒屋」にでてくる小僧さんの声に似ているので、お可笑しくいつもこの声がこだます度に笑いをこらえていました。

それにしても上述のLocal rule(特殊約束)の中の数量制限は全く忌々(いまいま)しいものでした。
とぼけて多めに頼むのですが、店員さんに気づかれ、絶対にだしてもらえませんでした。よくやったのが友人と飲みに行く時、一人を15分ほど散歩させてから店に戻らせて、今来た客だからといって数量を嵩(かさ)上げさせていました。
さらにあまり飲めない女性達を多く連れて行き、数量を嵩(かさ)上げして飲んだ記憶がありますが、結局そこまでしてまで飲む必要がないことに気がつき、その後足が遠のきました。

世の中には奇特な方がおられて、松風のアテをパチリしていたので紹介します。
D's diner1
「おじゃこの佃煮」と「昆布の紫蘇」です。この店はこのアテから始まります。これは「松風」さんでのお約束です…
D's diner2
「湯豆腐」です。「湯豆腐」といえば「湯豆腐」なのです。これ以上なくこれ以下でもありません・・・不思議なアテです(笑)
D's diner3
「湯葉」と「マグロのヌタ」です。湯葉は山葵で、ヌタは隠れていますが若布の下には青柳が偲んでいるとのことです・・・忘れていました。これは美味しかったですね。
D's diner4
「おでん」と「塩辛」です。「塩辛」は柚子の香りがきいていていけます、日本酒がすすみます。おでんは確か最後のほうにでてきた記憶があります、そうこれがでてきたら「お積(つも)り」なのです。
上記画像は「KISHO director's blog」さんblogより転載

ということで今日のお店は浅草「浅草ビアホール D's diner」の暖簾をくぐりました。
要はフリネタの「松風」さんに居抜きで入ったお店です。

住所: 東京都台東区浅草1-15-6 1F
:03-5806-5566
定休日:月曜日

D's diner5
お店の外観です。

D's diner6
店内の雰囲気です。このお店「ダイマス」さんの浅草での三軒目のお店です。ということで期待して入ったのですが、駄目ですこのお店、まずストールが坐りにくい…長時間滞在させない為ですか。お店がガチャガチャして喧騒と紫煙のトルネードです。
なにか食べようかと思いメニューをみるとhotchpotch(ごちゃ混ぜ)です。
スペアリブ、ハンバーガー、うどん、餡蜜…なんだこれは、耐えられない、耐えることはできません、というこでスーパードライの中ジョッキ一杯を急速に胃に流し込み、這う這うの体で立ち去りました。
こんな日もあります…

それでは(^_-)