今日は「男のみえ」の話です。
只今とちがってむかしは世の中がよかったんで、旅なんざア歩いてると、大概一週間ぐらいの興行の中には、誰かしら変テコな女でもなんでも出来たもんでございますが、中々自分にや女なんざ出来もしないくせに、「昨夜はなんだよ、女に呼びに来られてねえ」なんてんで、何処かに出て行って帰って来ないことがよくあります。その時分にやそういうことを云って、相手をダマす癖があったもんであります。

あたしと一緒にいる一座に、先代の遊三(三遊亭遊三)の弟子に遊林という男かおりまして、これがまたとても自惚れのつよい男でね。「高座がすんじゃってから女から呼びにくる筈になってるんだが、どうしたんだろうナ」なんてつぶやいている。
それからわれわれ仲間が外に出て行って、近所のタバコ屋かなんかの娘さんにたのんで、「今夜橋のたもとまで来て下さい」という電話をかけて貰うてえと、当人喜びましてナ、
「おう女から電話がかかってきたよ、行ってくるよ」
てんで出てっちまった。
「いまにあいつ帰ってくるよ、待ってるところに行ったって誰もいやアしないんだから」……ところが待てどくらせど帰って来ない。とうとう一晩中帰らずじまい。
そうすると翌る朝になって帰って来たんで早速、
昨夜ゆんべはどうしたんだ?
「いやアおどろいたよ。お約束の橋のたもとに女が待ってるんでね。それから二人で一杯のんで、待合かなんかにしけこんで、嬉しいよオてんでなんたってあたしを帰さねえのさ」……おかしいな嘘の電話なんだがと思うけれども、「疲れちゃって仕様がねえ」なんて、タバコなんぞふかしてる。

そうすると下足番が、「ゆうべ傍に荷を送るんで、遅く停車場に行ったら、停車場の待合室で、おたくの芸人さんが寝てましたよ」てえわけだ。
奴は橋のところに行ったけれども女はいないし、さてといって帰ってくるのも体裁がわるいもんだから、駅の待合室に寝てるところをその下足番が見てたってわけですナ。
「志ん生芸談」古今亭志ん生著より転載

私は高校の時に剣道をやっていました。
夏休みは長野で合宿です。
合宿では当然のことながら稽古の合間には小休止があります。
そこで私達は砂漠のラクダのように水飲み場に行って稽古で蒸発した水分を補給するわけですが、そこで見かけたのは、先鋒をやっていた塚原が、あいけね、飲みすぎちゃった、といって飲んだ水を吐いていたのです。
これを見ていた私は、何やってんだよ、って塚原に聞くと、見ての通り、必要以上に水を飲みすぎるとこれからの稽古がきついんで吐いたんだよ、と事もなく言っていたのです。
これに興味を持った私は、そんなに簡単に飲んだ水を吐けるのかよ、と聞くと、コツがあってさ、基本は腹筋をうまく使うんだけど、後は慣れだよ、と言うではありませんか。
早速真似をしました。
最初はうまくできなかったのですが、徐々にそのコツが分かってきて、合宿最後の方は飲んだ水を自由自在に吐くことが簡単にできるようになったのです。
それを見ていた塚原は、できるようになったじゃない。すごいやつはさ、白と黒の碁石を飲んだ後に胃の中で碁石の表面の質感を感じとって白(白はツルツル)黒(黒はザラザラ)を自由に吐き分けることもできるんだぜ、と言っていました。
私は、そこまではいいよ、と言いながらもこの技を体得したことに大満足をしていたのです。
ちなみに稽古中は胃の中には何の残留物がありませんので単に水を飲んで吐き出しているだけで汚くはありません。あらかじめお断りしておきます。

閑話休題おはなしはもどりまして
今日のフリネタは「男のみえ」ですよね。
大学生の時に「スローなブギにしてくれ」等の著書で有名な片岡義男の小説にはまっていました。
彼が創りだす主人公はどんだけお酒を飲んでも基本酔わないというhard-boiledのguyなのです。
私はこのbehaviorに大憧れをしたのです。
どんだけお酒を飲んでも、クズレナイ、ミダレナイ、コワレナイ、これって超coolですよね!
でも小説ではなくrealな世界ではお酒は飲めば飲むほど酔うわけで、いくら気持ちをキリッと引き締めていても徐々にalcoholの酒毒は身体(からだ)特に頭脳(あたま)を蝕(むしば)んでいきますよね。
そこで登場したのが高校の時に体得した、水分を自由に吐く技、なのです。
ちょっとお酒を飲み過ぎて危険水域に入ってくるとこの技を駆使して疑似素面状態を作り出していたのです。
私はこれにより、どんだけ飲んでも“ミダレナイ奴”という評価を友達特に女友達から受けていて大ご満悦だったのです。
これは私的な男のみえだったのですね。
若いときはこのbehaviorに大満足していたのですが・・・
その内に高いお金を払ってその上飲んだものを戻しているという非経済な行為に疑問を感じ始めました。
そして徐々に酔うようになっていったのです。
今停酒して思うのですが、お酒って人と飲んでワイガヤもいいのでしょうが、つまるところは独り飲みが自由気儘に酔えていいのではと思う今日この頃であります。
これなら他人に気を使う事もありませんし、唯一迷惑がかかるのは自分の肝臓だけですので・・・


感謝と涙でいっぱいです!台湾謝謝



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今日は両国に出没です。
この街って本当に食べるところが少ないですよね。
ということでお昼をさがしながら歩いていると琴線にピンと触れるお店が出現しました。
今日のお店は「赤とんぼ」さんです。

住所: 東京都墨田区両国3-20-6
電話: 03-3635-5366
定休日:不明

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お店の外観です。

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メニューです。 

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今日のオーダー「ポークジンジャー」@950円です。
店内は大きな鉄板のカウンターが一枚、その前にどこからみてもステーキ職人オーラを全身から発しているご主人が独りおられます。
今日、たまさかお客は私のみですので、対峙している二人の間には凛とした空気が漂っています。
いいですね、こういう緊張感は・・・
注文をしますとさっそく肉のブロックから分量を目計算で切落して焼きあげます。
その流れは能役者の振る舞いを見ているようで動作に無駄がありません。

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そうそうほうれん草のボタージュの紹介を忘れました。
このボタージュは味が深くてコクがあります。
このよう美味しいボタージュを飲んだのは久々です。
ともて美味しいです。

閑話休題おはなしはもどりまして
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「ポークジンジャー」の味ですが、これが美味しいのです。
肉がよいのに加えて調理のサエでしょう。
イケますネ。
少しソースが濃かったようにも思えましたが、これは下町のde factoでした。
しか〜し、両国にこのような美味しいレストランがひっそりと隠れていたとは驚きです。
これだから食べ歩きはやめられないのですね(笑)

それでは(^_-)